がんを排除する免疫細胞治療学

2014.12.2 kaede / 免疫細胞、免疫強化、樹状細胞、NK細胞

がんを排除する免疫細胞の働き

 人の体にはガンに対する免疫応答が存在します。標準治療として認められている手術、化学療法、放射線治療にも、がんに対する免疫応答なくしては成り立ちません。この免疫の力を積極的に活用し、ガンの治療法の一つとして確立するためには、腫瘍免疫を正しく理解することが重要です。
 人の体は、約60兆個の細胞からなっていますが、一つの細胞の中には3万個以上の遺伝子が存在しており、この遺伝子の指令に基づいて、さまざまな働きをしています。がんはこの重要な遺伝子に何らかの原因で変異が起こり、それが積み重なることで多段階的に発達、がん特有の生物学的特徴を獲得していくと考えられています。
 しかし遺伝子の変異が起きてもすぐにガン化するわけではなく、細胞に備わっている修復機構で正常に戻ります。その一つとして、アポトーシス(細胞の自殺)を誘導し自滅します。
これらはその細胞自身が持つ内因性の腫瘍抑制機構です。しかし、この内因性の腫瘍抑制機構が働かなくなった場合、外因性の腫瘍抑制機構である免疫系が働きます。免疫系を担う免疫細胞が、ガン細胞の発現する危険シグナルやガン抗原を認識して攻撃を開始しガンを排除するのです。
 こういった素晴らしい力をできるだけ使い、副作用の強い化学療法、放射線治療の割合を減らすことで患者の体や精神面への負担を軽減して、体力をできるかぎり維持することで治療効果を高め、ガン治療そのものの効果を上げていこう、という動きが強くなってきています。そのためには、ガンと免疫を正しく理解し、患者が納得して治療をすることが重要不可欠です。

活発にがん細胞を排除する免疫細胞の種類と役割


樹状細胞の役割

 樹状細胞(DC)は、司令官のような役割を果たしている重要な細胞です。がん細胞に出会うと、樹状細胞はそのがん細胞を取り込み分解してリンパ節へ移動し、T細胞へ抗原の情報を伝達するだけでなく、その後の免疫反応の強さや方向性を決定する重要な役割を担っています。

項目1樹状細胞がガン細胞や残骸などを取り込んで、がんの目印を手に入れます。
樹状細胞がガン細胞や残骸などを取り込んで、がんの目印を手に入れているイラスト
項目2がんの目印を手に入れた樹状細胞はリンパ球にがんの目印を教え、がん細胞を攻撃するように指示します。
がんの目印を手に入れた樹状細胞はリンパ球にがんの目印を教え、がん細胞を攻撃するように指示するイラスト
項目3抗原を受け取った細胞傷害性T細胞とヘルパーT細胞はガン細胞の攻撃目標を記憶し、活性化。
抗原を受け取った細胞傷害性T細胞とヘルパーT細胞はガン細胞の攻撃目標を記憶し、活性化したイラスト
項目4ヘルパーT細胞の攻撃開始の合図を受けて活性化した、細胞傷害性T細胞が抗原を目印にガン細胞に総攻撃。
ヘルパーT細胞の攻撃開始の合図を受けて活性化した、細胞傷害性T細胞が抗原を目印にガン細胞に総攻撃するイラスト


NK細胞の役割(ナチュラルキラー細胞)

 ナチュラルキラー細胞は腫瘍細胞やウィルス感染細胞を素早く攻撃、排除できる細胞傷害性リンパ球の1つです。がん細胞をころすのにT細胞とは異なり、抗原認識をすることなく発見次第すぐに細胞傷害性を示すので、迅速な攻撃ができます。


NKT細胞の役割(ナチュラルキラーT細胞)

 T細胞の抗原認識などの免疫反応と、NK細胞の迅速な攻撃をする特徴の両方の性質をもった細胞。細胞傷害性の能力もNK細胞の3倍以上の力持つ、すぐれた細胞です。


がんを攻撃する主な免疫細胞の種類と役割

NK細胞 細胞のHLA型を判別し、自らと異なるものの場合、攻撃を加える。
ADCC(抗体依存性細胞傷害)活性で、抗体が結合した異常細胞に攻撃を加える。
T細胞
アルファ・ベータT細胞
T細胞の大部分を占め、主に特異免疫を担う。
細胞傷害性T細胞
樹状細胞やマクロファージから排除すべき細胞の抗原を教えてもらって活性化、増殖を始める。ヘルパーT細胞の指令を待って、その抗原を表面に出している細胞に攻撃を加える。
ヘルパーT細胞
樹状細胞やマクロファージから排除すべき細胞の抗原を教えてもらい、その抗原のある細胞を攻撃対象とするキラーT細胞に攻撃開始の指令を出す。
レギュラトリーT細胞
細胞傷害性T細胞の機能を制御する。
ガンマ・デルタT細胞 アルファ・ベータT細胞が認識する「抗原」に依存することなく感染症やがんから体を守る、T細胞の少数集団。
NKT細胞 NK細胞とT細胞の性質を併せ持ち、排除すべき細胞に対して直接または間接に攻撃を加える。
B細胞 体液性免疫応答を担う「抗体」を産生する。抗体は細菌やウイルスなどの病原体にくっついてその働きを止めたり、免疫細胞が攻撃する際の目印になったりする。
樹状細胞(DC) 病原体や異常細胞などを取り込み、分解した後、その病原体や異常細胞などの特徴をT細胞に教える。